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こんなときどうしましょ

解熱剤は怖い?!
 インフルエンザ脳炎による死亡に解熱剤が関係しているのではないかという研究発表が新聞で報道されました。インフルエンザ脳炎による死者の統計を見てみるとある種の解熱剤(ポンタール、ボルタレン)を使った場合、使わなかった場合より3-4倍死亡率が高いというものです。しかしこの研究は症例数が極端に少ないこと、インフルエンザ脳炎では高熱であるほど死亡率が高くこれらの解熱剤は高熱時によく使われることなどから、結論については賛否両論があります。またこの研究はインフルエンザに解熱剤を使用すると脳炎になる確率が高いと言っているわけではありません。
 しかし、ひとたび新聞報道されると「インフルエンザで解熱剤を使うと脳炎になる」という話に変わって伝わり、ついには「熱がでたときに解熱剤を使うと死んでしまう」という話になってしまいます。これでは解熱剤なんか怖くて使えませんね。
 実際問題として、取り上げられたポンタールやボルタレンなどの解熱剤は小児科領域で使うことはあまりありません。少なくとも当院ではまず処方しません。効き目はいいのですがその反面低体温やショックなど怖い副作用もあるので小さな子どもには使いにくいのです。小児に使う解熱剤で一般的なのはアセトアミノフェン(カロナール、アルピニー、アンヒバなどの商品名)です。これにはすかっと熱が下がるという切れ味はありませんし、粉薬は飲みにくいのですが、効き目が緩やかで比較的副作用も少ないので安心して使えます。これとて埼玉の保険金殺人に使われたくらいですから多量に投与すれば副作用がでます。
解熱剤は病気を治す薬ではなくあくまでも症状を緩和する薬ですから、なんでもかんでも熱がでたら解熱剤という図式はよくありません。熱があっても元気がよくて眠れるようなら解熱剤は必要ありません。しかし、「解熱剤は毒だ」と信じ込んで、熱のために体中が痛くてふーふーしているような状態を我慢させるのも病気の治癒を遅らせる事になります。そんなときは私なら解熱剤を使います。また、薬だけでなく、体を冷やしたり、通気をよくしたりして物理的に熱を下げるのもいいでしょう。

2003/5/5 4:45 更新


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