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こんなときどうしましょ

神経芽細胞種の尿検査
 乳児検診のときに神経芽細胞腫スクリーニングに引っかかって再検査になったという話を時々きく。あなたのお子さんは小児癌かもしれないと言われたわけであるから親の心中は穏やかではない。結果がでるまでは夜も眠れないという方もいる。
 日本人は癌にしろ、他の病気にしろ「早期発見、早期治療」が病気への対処としては絶対的に正しいと、国民的に思いこんでいるフシがある。風邪にしてもくしゃみ三つしたら早めに薬飲んで治しておきましょうとか、そういう国民性である。
 神経芽細胞腫のマススクリーニングは予後の非常に悪い小児癌を早期発見して小さいうちに治療してしまおう、そうすれば助かるんじゃないかというところで出発した。ちょうど開発にかかわっていた同僚の小児外科医から、これが普及したらどんなに素晴らしいかを熱っぽく聞かされた覚えがある。おしっこを濾紙に吸収させて調べるので赤ちゃんが痛い思いをすることはない。これで「早期発見」できれば悪いことは何もないというので、神経芽細胞腫スクリーニングはあっという間に全国に拡がった。ところが何年か経過してわかったことは、この検査で見つかるのは自然に小さくなって治癒してしまうたちのよい腫瘍が大半だということだ。このスクリーニングで神経芽細胞腫による死亡は減っていないのではないかという疑いが強くなった。知らなければ自然に消えていた腫瘍を発見したばかりに手術したり抗ガン剤を投与したりされたのである。手術に至らないまでも要2次検査となって眠れない夜を過ごした家族は数え切れない。
もうやめていいと思うのだが、一度政策として始めるとなかなか止めることができないのが日本の行政である。ちなみに、欧米ではこのスクリーニングは効果が認められないとして行われていない。

2003/5/3 17:23 更新


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