こんなとき…

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うちの子包茎?

こどもの包茎を手術すべきかどうか、小児外科 や泌尿器科でも議論が分かれている。

「短小、包茎、インポ」は「お前の母ちゃんでべそ」以上に男子にとって屈辱的な侮蔑語である。思春期ともなると「包茎!」の悩みはますます深くなる。ネットや漫画雑誌などには不安をあおってお客を勧誘する包茎専門の病院の記事があふれる。思春期になって悩む前に、子どものうちに何とかしてやれないか、子を思う親の心は海よりも深いのである。

赤ちゃんのおちんちんをみて、ひょっとして包茎?いうことで小児科の当院でも包茎の相談は結構多い。おちんちんのケアはどうしたらよいでしょうなんて聞かれることもある。そういうわけで、検診でも男の子は必ずおちんちんをチェックしている。

以前は4-5歳になって亀頭の先っぽのおしっこの出口(外尿道口)が全く見えな い包茎は小児外科に紹介していた。こういうのは「真性包茎」。将来自然に剥ける可能性は少ない。

ところが7−8年前、神奈川こども医療センターの泌尿器科の先生の講演でステロイド外用療法の話を聞いて考えが変わった。少量のステ ロイドの外用でピンホールのような包茎が2週間で包皮が反転するようになるのである。使用前後の写真であまりにすっきり剥けているので、これは試してみよ うということになった。その時の講演会は小児科医が対象だったのだが反響は大きかった。
実際に試してみると本当にきれいに剥ける。なんだ、これじゃあ手術なんて要らないじゃないか、という結論になった。そのころ、小児科医の多くはこの方法を 知らなかった。

それ以来、真性包茎にはまずステロ イド外用を試すことにしている。長く塗っても1ヶ月、それも包皮の一部だけだから副作用などの心配もない。当院での成績もほぼ全例剥けている。手術するよりずっといい。

2週間後のチェックでうまくいっていたら「剥けましておめでとう」とお祝いの言葉をかけるようにしている。

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手足口病は登園禁止?

手足口病はヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)とならんで「夏風邪」といわれる夏場のウイルス感染症の代表選手です。毎年6月頃から保育園や幼稚園で 流行りはじめます。原因となるウイルスはエンテロウイルス、コクサッキーウイルスなど複数ありますので、何度もかかることがあります。潜伏期間は3日~6 日で、唾液や便から感染します。

このウイルスの特徴として、ウイルスの排泄期間が長いことがあります。咽頭からは1~2週間、便からは3~5週間排泄され ることがわかっており、この間は感染する危険があります。

発疹のある間だけ「登園停止」としても、園内での感染の拡大を防ぐことはできません。かといって ウイルスの排泄期間全部を登園停止とするのは現実的ではありません。

また感染しても軽症例が多いので、最近の考え方としては、発症していても発熱や摂食障 害など本人に辛い症状がなければ登園させるというのが主流です。

川崎市医師会保育園医部会でも長い議論の末1999年に「手足口病と伝染性紅斑(リンゴ 病)は登園停止としない」という取り決めを行いました。公立の保育園や幼稚園ではこの基準で取り扱われていますが、私立の保育園、幼稚園では園独自の取り 扱い基準があります。このため、一部の保育園や幼稚園ではいまだに手足口病は「登園停止」となっているところがあります。

親は元気なこどもを休ませ、「登園許可書」を求 められるという余計な負担を負わされています。この負担は「無駄な負担」です。保育関係の方にもできるだけ理解いただきたいと思います。

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神経芽細胞種の尿検査

数年前までの話である。

乳児検診のときに神経芽細胞腫スクリーニングに引っかかって再検査になったという話を時々きく。あなたのお子さんは小児癌かもしれないと言われたわけであるから親の心中は穏やかではない。結果がでるまでは夜も眠れないという方もいる。
中には、検査の結果神経芽細胞腫が見つかり手術したというこどもさんもいた。

日本人は癌にしろ、他の病気にしろ「早期発見、早期治療」が病気への対処としては絶対的に正しいと、国民的に思いこんでいるフシがある。風邪にしてもくしゃみ三つしたら早めに薬飲んで治しておきましょうとか、そういう国民性である。
 神経芽細胞腫のマススクリーニングは予後の非常に悪い小児癌を早期発見して小さいうちに治療してしまおう、そうすれば助かるんじゃないかという ところで出発した。ちょうど開発にかかわっていた同僚の小児外科医から、これが普及したらどんなに素晴らしいかを熱っぽく聞かされた覚えがある。おしっこ を濾紙に吸収させて調べるので赤ちゃんが痛い思いをすることはない。これで「早期発見」できれば悪いことは何もないというので、神経芽細胞腫スクリーニン グはあっという間に全国に拡がった。

ところが何年か経過してわかったことは、この検査で見つかるのは自然に小さくなって治癒してしまうたちのよい腫瘍が大 半だということだ。このスクリーニングで神経芽細胞腫による死亡は減っていないのではないかという疑いが強くなった。知らなければ自然に消えていた腫瘍を 発見したばかりに手術したり抗ガン剤を投与したりされたのである。手術に至らないまでも要2次検査となって眠れない夜を過ごした家族は数え切れない。

海外でもいくつか追試が行われたが、神経芽細胞腫による死亡を減らす効果は認められないという結論が出され、欧米でこのスクリーニングを実施している国はない。

2003年に検査の有効性に疑問が多いという理由でこの検査は中止になる。

その後も検査の有効性についての議論は続いている。尿検査は神経芽細胞腫による死亡を減らすという立場から、川崎市では聖マリアンナ医大小児外科が中心となって、尿検査の時期を従来の6ヶ月から10ヶ月に遅らせて実施する試みがなされている。一部医療機関はではこの研究に協力して尿検査を実施している。

当院では、神経芽細胞腫のマススクリーニングにたいしては懐疑的な立場をとっており、この調査研究には参加していない。


 

 

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