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かたおか小児科クリニック

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こんなとき…こんなとき…

神経芽細胞種の尿検査

2008/10/16

数年前までの話である。

乳児検診のときに神経芽細胞腫スクリーニングに引っかかって再検査になったという話を時々きく。あなたのお子さんは小児癌かもしれないと言われたわけであるから親の心中は穏やかではない。結果がでるまでは夜も眠れないという方もいる。
中には、検査の結果神経芽細胞腫が見つかり手術したというこどもさんもいた。

日本人は癌にしろ、他の病気にしろ「早期発見、早期治療」が病気への対処としては絶対的に正しいと、国民的に思いこんでいるフシがある。風邪にしてもくしゃみ三つしたら早めに薬飲んで治しておきましょうとか、そういう国民性である。
 神経芽細胞腫のマススクリーニングは予後の非常に悪い小児癌を早期発見して小さいうちに治療してしまおう、そうすれば助かるんじゃないかという ところで出発した。ちょうど開発にかかわっていた同僚の小児外科医から、これが普及したらどんなに素晴らしいかを熱っぽく聞かされた覚えがある。おしっこ を濾紙に吸収させて調べるので赤ちゃんが痛い思いをすることはない。これで「早期発見」できれば悪いことは何もないというので、神経芽細胞腫スクリーニン グはあっという間に全国に拡がった。

ところが何年か経過してわかったことは、この検査で見つかるのは自然に小さくなって治癒してしまうたちのよい腫瘍が大 半だということだ。このスクリーニングで神経芽細胞腫による死亡は減っていないのではないかという疑いが強くなった。知らなければ自然に消えていた腫瘍を 発見したばかりに手術したり抗ガン剤を投与したりされたのである。手術に至らないまでも要2次検査となって眠れない夜を過ごした家族は数え切れない。

海外でもいくつか追試が行われたが、神経芽細胞腫による死亡を減らす効果は認められないという結論が出され、欧米でこのスクリーニングを実施している国はない。

2003年に検査の有効性に疑問が多いという理由でこの検査は中止になる。

その後も検査の有効性についての議論は続いている。尿検査は神経芽細胞腫による死亡を減らすという立場から、川崎市では聖マリアンナ医大小児外科が中心となって、尿検査の時期を従来の6ヶ月から10ヶ月に遅らせて実施する試みがなされている。一部医療機関はではこの研究に協力して尿検査を実施している。

当院では、神経芽細胞腫のマススクリーニングにたいしては懐疑的な立場をとっており、この調査研究には参加していない。

 

 


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