2009/04/23
手足口病がぽつぽつ増えてきて、もうすぐ「夏かぜ」の季節である。
患者さんの説明に「夏かぜ」という言葉を時々使うのだが、どうもこの「夏かぜ」という言葉は曖昧でいけない。
夏場に流行るから「夏かぜ」と言うわけだが、 だいたい「かぜ」って、何なのよ。
これはなかなか難しい設問。「かぜ」という言葉が使う人によって意味が様々。一つの病気の定義というわけではない。
ある人はのどや鼻など「上気道」の感染症という意味だと言い、ある人はのどや鼻に限らずウイルス感染症一般という意味で使い、またある人は咳や鼻水が出る状態という意味で「かぜ」という言葉を使う。
「軽い病気」という意味で使われることもある。
とても曖昧な言葉なのである。そもそも「かぜ」という言葉は医学用語ではない。
「ウイルスによる上気道炎」だとか「急性鼻咽頭炎」だとか「インフルエンザB型」だとか診断のつく範囲で正確な病名をつけるべきだろう。
ただ「かぜ」という言葉は便利ではある。患者さんに「ウイルス性上気道炎」ですね、と言っても「ん?」という顔をしているが、「かぜ」ですねと言えば「ああそうですか、よかった。」と納得していただける。便利なだけに使い方には慎重を期する必要がある。
よそのクリニックを受診した患者さんから「かぜの菌がのどに入っているというので抗菌薬が出ました。」というような話を聞くことがある。うーん、どういう説明だったのだろうかと思ってしまう。
そんなわけで私自身も「かぜ」という言葉はいまだに時々使うのだが、誤解を与えないような使い方をせねばならないと自戒している。
で、「夏かぜ」にもどる。
一般的に「夏かぜ」としてくくられるのは「咽頭結膜熱(プール熱)」「ヘルパンギーナ」「手足口病」あたりだろう。
夏場に咳や鼻水くしゃみが出たら「夏かぜ」かも知れないが、あまり言わないように思う。
夏場にもインフルエンザは発生するがこれも「夏かぜ」ではない。
考えてみたら、これらの病気を「夏かぜ」という項目にくくらなくてはならない理由はどこにもないのである。
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