梶が谷駅から徒歩9分
かたおか小児科クリニック

0280-62-10110280-62-1011

WEBからのお問い合わせはこちら

Dr.かたおかの診療日誌Dr.かたおかの診療日誌

カテゴリーアーカイブ
過去6ヶ月のアーカイブ

SGA性低身長症

2009/07/17

 小児科医会の講演会で「薬理学的成長ホルモン治療が有効な疾患ーSGA性低身長症」の話を聞く。講師は川崎病院の安蔵慎先生。内分泌の専門家である。

 「SGA性低身長症」というのは耳慣れない言葉である。いや、知らなかったのは私だけかも知れないが。

妊娠在胎週数の割に小さく産まれた赤ちゃんをSmall for Gestational Ageという。昔はSFD(Small for date)とかIUGR(Intrauterine growth returdation子宮内発育不全)と言ったように思うのだが、今はSGAだそうだ。

このSGAの赤ちゃんの中に、生まれてからも成長のキャッチアップがなくて小さいまま成人する一群の人たちがいる。この人たちをSGA低身長症と呼ぶ。

こういう低身長に対して成長ホルモンを高用量で投与すると成長が促進され背が伸びるという。

 

成長ホルモンが足りなくて背が小さい人(下垂体性小人症)以外でも思春期が来る前に成長ホルモンを投与すると背が伸びる。成長ホルモンが多すぎると背が伸びすぎて巨人症になるくらいである。

以前は、成長ホルモンは解剖して取り出した人間の脳下垂体から抽出されていた。一人から取れる成長ホルモンはごくわずか。非常に貴重なもので、その上感染症の危険も伴っていた。

だから、その成長ホルモンを治療に使うのには非常に厳密な基準が作られていて下垂体からの成長ホルモン分泌が足りないことをいくつかの検査で証明しなくては使えなかった。

 

しかし、成長ホルモンが遺伝子組換え技術によっていくらでも量産でき、しかも感染症の心配がないと言うことになると様相は変わってきた。むろん、下垂体性小人症の治療を受ける人にとっては朗報なのだが、それ以外に大きなビジネスチャンスが生まれてきたのである。

せっかく安全に大量生産できるようになった成長ホルモンである。成長ホルモンが足りない低身長にだけ使うのでは投下した資本の回収が遅くなる。

ということで、いろいろなタイプの低身長にも適応が拡げられてきた。

SGA性低身長に対する成長ホルモンの適応は昨年10月からだという。私が知らなくても、まあそんなに恥でもないだろう。健康保険が使えるが、3割の自己負担がある。

薬代だけを試算したところ、30kgの人が比較的少なめの用量で使って月に213000円。この3割が自己負担で月に64000円。これを4年間続けたとして、1000万円。それ以外にも診察料、指導料、処方料などがつくから総額はもっとかかる。高用量で治療すれば薬代はさらに増えるはず。

さて、この費用負担はどうなのか。誰が払うのか・・・

講演の趣旨は、健診などで背が小さくても気にしてない親も多いので、こういう低身長もあるということで啓発しましょうということ。

へえ、そうなんだ、と思う反面、へそ曲がりなのでなかなか素直には受け入れられないなあ。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


※表示されている文字を入力してください。

診療日誌TOPへ戻る