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かたおか小児科クリニック

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日ハムさん、ちょっと待った!

2009/08/19

 新型インフルエンザが本格的な流行になってきたようだ。近くの保育園でも患者さんが出て、今日もインフルエンザではないかと心配する患者さんが多かった。熱が出た、のどが痛い、咳鼻水などの風邪症状がひょっとしてインフルエンザではという心配である。

 そうしたところで、気にかかったのは今日のニュースでプロ野球日本ハムファイターズの選手が新型インフルエンザにかかったあとの球団の対処である。

3人の選手が新型インフルエンザに感染していることがわかった。この選手たちは適当な治療を受け、当面ベンチ入りはできない。これはふつうの流れである。保育園でも学校でもこうするだろう。

問題は残りの熱などの症状がない選手・球団職員も全員がインフルエンザの迅速検査を受けて感染者はいなかったと発表されたことである。陰性だった残りの選手はベンチ入りするし、職員も仕事を続けるということらしい。それはそれでかまわないが、迅速検査が陰性だったから試合に出場してかまわないのではなく、インフルエンザを疑う症状ががないから出場してかまわないと言うことじゃないか。

いくらインフルエンザウイルスに暴露されていたとしても、潜伏期の間は検査をしてもまず陰性である。発症直前に検査をすれば陽性に出るかも知れないがそう言うケースは検査しなくてもすぐ熱が出るからわかる。

こういう、無症状の人全員に検査をして陰性だったからみな大丈夫だ、というような医学的には全く無意味な検査をする事は非常に困った行動といわねばならない。

まずは医療資源の無駄遣い。さらに、陰性だからといって感染していないという証拠にはならない。「濃厚接触者」の中から発熱などの症状が出る人が出るかも知れないが、出てきたら検査なり治療をすればよいのである。

「濃厚接触者」をそのままベンチ入りさせるわけにはいかないではないか。かといって潜伏期間が過ぎるまで休養というのではベンチ入りできる選手がいなくなる。インフルエンザ検査は苦肉のお墨付きだというエクスキューズなのだろう。

国内発生初期の濃厚接触者は抗ウイルス薬を服用の上7日間の隔離入院という指針はとっくに撤回されている。今の情勢では発症していない「濃厚接触者」を隔離する意味はほとんどない。

プロ野球チームなど世間の注目を浴びる集団で、症状のない人たち全員にインフルエンザの迅速検査をして身の証を立てたというようなことが世間に広まればどういう事になるかわかっているのだろうか。

学校でインフルエンザの患者が出た。同じクラスの生徒は無症状でも迅速検査をして陰性だったという証明書を持ってこないと登校させない、なんてバカなことを言うのと同じ。

プロ野球でこういう事をすれば、スポーツ団体は右にならえである。試合に出るためにインフルエンザ陰性の証明をください、などというリクエストが児童生徒の間でも増えてくるだろう。

保険診療じゃなくて私費でやるから勝手だろうという考えがあるかも知れない。ある個人が、症状はないけど心配だからと私費でこそっと検査するというのなら誰も文句は言わない。検査したからといって医師法違反になるわけでもない。

問題にしたいのは、そういう事をおおっぴらにして「ちゃんと対処してますよ」みたいなポーズを取るなと言うことである。

まわりはえらい迷惑なのである。


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