2010/05/16
ポリオ接種のお知らせに昭和50年ー52年生まれの親はポリオウイルスに対する免疫が低い人が多いので子どもの接種時に一緒に追加接種を受けることができるという一文が加えられている。
でも、この年代の親の追加接種は本当に必要なのか、質問が多いので問題を整理してみた。
厚労省の調査にによるとこの年代のポリオに対する抗体保有率は前後の年代に比べて明らかに低い。理由はわからないということになっているが、おそらく当時のワクチンに問題があったものと思われる。
ポリオに対する免疫が低い人がインド、パキスタン、バングラデシュ、その他一部のアフリカ地域の野生ポリオ発生地域に行けば感染して発症する危険がある。
なので、この年代の人で当該地域に行く予定のある人はワクチンを積極的に受ける必要があるだろう。
現在日本国内での野生ポリオの発生はない。これはポリオワクチンによってほとんどの人が免疫を持っているためで、乳幼児に対する接種を中止して免疫のない世代が増えてきたら輸入ポリオが再び流行する危険がある。
そのため、乳幼児に対するポリオワクチンの接種は続ける必要がある。
現在日本や中国、その他開発途上国で使われているポリオワクチンは経口の生ワクチンである。生ワクチンはコストが安く、飲み薬なので投与が簡単というメリットがある。
生ワクチンは野生の強毒ウイルスを継代培養して弱毒化したものである。通常は麻痺などの症状は出ることはないが、ワクチンとして投与されたウイルスが体内で増えるときに先祖返りして毒性を回復する事が稀にある。
このように毒性を取り戻したワクチン株ポリオウイルスによる麻痺は200万人に一人。通常一人に2回接種するので400万回接種に一回の割で接種した人に起きる。
ポリオウイルスは便中に排泄されるので、便を通して周囲の人(親など)に感染することがある。毒性を回復したワクチン株ポリオウイルスが免疫のない親などに感染して麻痺が起きる確率は500万回の接種に一回とされている。
免疫のない世代の親が子どもからのワクチン株ポリオの感染から身を守るためにワクチンを接種しても接種した本人に麻痺が起きる確率は400万回の接種に一回ある。400万回と500万回では確率としてはほとんど変わらないと考えてよいだろう。
なので、流行地域に行く可能性のない人は追加接種を受けるメリットはほとんどないと言っていいと思う。
子どもからウイルスが排泄される1-2ヶ月の間、おむつ替えの時の手洗いを徹底してするという注意でよいだろう。
もっとも、これは「生ワクチン」だからの話であって、欧米諸国のように「不活化ポリオワクチン」を採用すればワクチン株によるポリオの発生はなくなる。
ポリオ流行地での話ならいざ知らず、10年以上国内で野生ポリオが発生していない国で今も「生ワクチン」というのは情けない話である。
現在国産の不活化ポリオワクチンはDPTにプラスして4種混合という形で開発が進められているが、このペースで行けば何年後に使えるか全く不透明なままである。
国産品ができるまで不活化ワクチンが使えないというのは国民にとって非常大きな不利益である。
世界中で安全に使われている不活化ワクチンがあるのだから緊急輸入してでも不活化に切り替えるべきだろう。何も日本における独占メーカー「日本ポリオ研究所」だけに期待する必要はない。
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