2011/01/29
医師会で開催される心肺蘇生法の講習会に参加してきた。講師は聖マリアンナ医大横浜市西部病院救命救急センターの桝井良裕先生以下Japan ACLS Associationの皆さん。受講生3人にインストラクターが一人と人形が一体。密度の濃い講習だった。
勤務医の頃には心肺蘇生をする場面はしょっちゅうあったのだが、これは病院内で設備も道具も人手も調っているところでのこと。
酸素と叫べばナースが酸素に繋がったマスクバッグを持ってくる。誰かが心臓マッサージをしている。救急カートが到着して、気管内挿管をして気道を確保すればとりあえず一段落する。
病院外で徒手空拳で心肺蘇生をするというのは院内蘇生とは全く事情が違う。
15年前、マラソン大会で心肺蘇生のByStanderになったことがある。ハーフマラソンのゴールでバーコードの読み取りに並んでいたらその先で人が倒れている。救護の人が担架を持ってきて介抱しているようだ。
何があったのだろうと思いながらもとりあえず自分のゴールタイム確定を終えて担架に近寄ってみた。
倒れていたのは若い男性ランナー。当時の私より先にゴールしていたのでそこそこ速かったはず。
担架についていきながら胸の動きを見たが呼吸はない。おそらく心肺停止。
救護テントまでついて行くと間欠的に酸素をパコパコとマスクに送る「蘇生機」を顔に当てている。血圧を測る人もいる。これを見ていてこれは出ていくしかないと思った。私は医者です。お手伝いしますと叫んで胸骨圧迫を始めた。
しかし全く蘇生に反応しない。脈は触れない。
何より救急車が来ない。
来ないはず。マラソン大会で車道が規制されていて通れないのだ。
救急隊が来たのは15分ほど後だったと思う。
「こちらで救急車呼びましたか」と言って入ってきた。遅いつ!
救急隊が男性を救急車に乗せたときも心臓は動いていなかった。
救急車が出ていってその場に座り込んだ。マラソンの疲れがどっと出た。口の中はカラカラ。直接口と口で人工呼吸をしていたので口のなかに強い違和感がある。水飲み場で頭から水をかぶって口をすすいだ。いくらすすいでもすすぎ足りない。
翌日、大会関係者と連絡を取って男性が亡くなったことを知った。
あの時AEDがあったらあの青年は助かっていただろうと今でも思っている。
今日の経験が生かせる場面に出くわさないことを願っているが、もしそうなったら今度は助けられるかもしれない。
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