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9月の不活化ポリオ導入まで待つかどうか

2012/05/29

 今年の9月1日から不活化ポリオワクチンが導入される。それに伴い生ワクチンの定期接種としての接種は8月31日で終了する。

 このニュースを育児雑誌で紹介したいと言うことで取材を受けた。2週間ほど前のことだ。雑誌の発売は6月半ばとのこと。

現在ポリオ接種対象年齢でポリオワクチンが未接種の人はどうしたらよいのか。この春の最後になる集団接種を受けるべきか、秋の不活化導入まで待って良いのか知りたいというのが主な話題。

雑誌が発売される頃には春の集団接種は終わっているところが多いので、あまりタイムリーな記事とは言えない。

各地で集団接種を回避する人が多くてこの春の生ワクチンの接種状況は50%にはとても届かない。川崎市でも集団接種の出動医の仕事がないので半分以上が出動キャンセルになっている。

集団接種をしているところでは全国どこも同じ様な状況だろう。

この接種見合わせの状況をさして、海外からの野生株ポリオが侵入して流行したらどうするつもりだと「警鐘」をならす向きが少なくない。集団接種の接種日を減らした自治体に抗議の電話が入ったりもするそうだ。

だが冷静に考えてみよう。

32年間一例も野生株ポリオの持ち込み例がない現在の日本の状況から考えて、この数ヶ月間、生ワクチンをこれまで通りに接種し続けてワクチン株のポリオ麻痺が発生する確率と、野生株ポリオが持ち込まれてポリオ患者が発生する確率、どちらが高いか。

海外からの野生株の持ち込みから流行する可能性はもちろんゼロではない。何年にもわたってワクチンを接種しない状況が続いたら野生株の持ち込みからの流行もあるかも知れない。しかし、この数ヶ月に関して言えばゼロに近いと考えていいのではないか。

川崎市では6月半ばで生ワクチンの集団接種が終了する。これ以降は生ワクチンを受けたいと思っても受けられない。6月の時点でまだ1回も接種していなくて接種するかどうか迷っている人はパスという選択枝が一番だと思う。

未承認の不活化ポリオを受けるチャンスがある人は受けた方がいいのは言うまでもない。周囲に生ワクチンを接種した人が居てそこからの二次感染でポリオ麻痺を生じる確率はゼロではないからだ。少なくとも野生株ポリオに罹る確率よりは高い。

ということで、現在ポリオワクチンを1回も接種していない人で未承認の不活化ポリオを接種するチャンスがないひとは秋まで待ちましょう、と言いたいと思う。

以上は、このたび発表された国の不活化ポリオワクチンへの切り替え策に個々の市民がどう対応したらよいのかという点からの話であって、国のポリオ対策がこれで万全と言っているわけではない。


“9月の不活化ポリオ導入まで待つかどうか” への3件のフィードバック

  1. aママ より:

    初めまして。
    不活化ポリオの注射の仕方について質問させて下さい。
    現在、個人輸入にて打たれている不活化ポリオの注射は筋肉注射だと小児科の先生から聞きました。
    でも、以前あった幼児大腿四頭筋短縮症の事件以来日本では筋肉注射の予防接種はタブーになったと聞きました。
    不活化ポリオの筋肉注射は安全で、以前あったような幼児大腿四頭筋短縮症の危険性は全くない物なのでしょうか??
    9月から公費で行われる不活化の注射は皮下注射で行われると聞きました。
    なぜ9月からは皮下注射で現行は筋肉注射なのでしゅおか??
    その話を聞いてから9月まで不活化の予防接種を待った方がいいのか迷っています…。
    回答頂けたら幸いです。
    よろしくお願い致します。

  2. かたおか より:

    かたおかです。
    コメント見逃しておりました。
    現在個人輸入で接種されているImovaxPolioという不活化ポリオワクチンは添付文書によれば皮下注・筋注どちらも可です。
    大腿部に筋注しなくてはいけないと誤解している先生もおられるようですが、皮下注でもかまいません。当院では原則として上腕に皮下注射しています。5本同時接種の時はポリオを大腿部に筋注しています。
    大腿部への筋注で筋拘縮症が起きるかどうかのご心配ですが、大腿四頭筋拘縮症の原因は筋肉注射自体にあるのではなく、注射した解熱剤や抗生剤が問題だったことがわかっています。不活化ポリオワクチンだけでなくワクチンの筋注が原因で筋拘縮症が起きることはありません。
    ところが、筋拘縮症の一件で小児科学会が小児への筋注を原則禁止という見解を出したために、無関係なワクチンの筋肉注射も避けられる様になりました。(この見解の全文を読めばわかりますが、ワクチンの筋肉注射もいけないとは一言も書いてないのです。)
    9月からの不活化ポリオワクチンが皮下注なのは治験を皮下注でしか行わなかったからです。何故皮下注でしか治験しなかったのかと言えば、まだこの見解に縛られているからでしょう。
    小児科学会ではワクチンの筋注は安全で有効であるので添付文書に皮下注だけでなく筋注も加えるよう厚労省に申し入れをしています。
    ということで、筋注か皮下注かで不活化ポリオワクチンの接種を悩む必要は全くありません、
    筋肉注射は安全ですし、不活化ポリオワクチンは皮下注射でも筋肉注射と同じ効果を期待できます。

  3. aママ より:

    お忙しい中、回答ありがとうございました。
    大変丁寧に説明して頂き、今までどの記事を読んでも不安が拭いされなかったのですが、先生の説明を読んで安心できましたし、納得できました。
    とてもわかりやすく、丁寧に説明して頂き、今までずっとモヤモヤしていたのがスッキリできました。
    本当にありがとうございました。

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