2012/09/28
久しぶりに鼠径ヘルニアの嵌頓に出くわした。
嘔吐と顔色不良、不機嫌で飛び込んできた赤ちゃん。
胃腸炎にしては吐いた後の機嫌が悪すぎるし、元気もないし、顔色も悪い。お腹を見ようとおむつを外したら巨大な鼠径ヘルニアである。
ヘルニアは1ヶ月の頃から出るようになっていて、最近元に戻らなくなったので来週手術の予定とのことだった。それまではヘルニアが出ていても腸内容は通過していたのだろう。
来た時点では腸閉塞の症状である。
とにかく戻してみようと両手を使ってじわじわ揉み込むようにして飛びだした腸を少しずつ圧迫していく。ぱんぱんに張った脱出部はなかなか小さくならない。
ゆっくり押していくと、時々ぐぐっと空気が通る音がして脱出部がへこんでいく。
いったんガスが動き始めたら後はゆっくり戻せる。こういうことは何度も経験している。
ところが半分くらいの大きさになったところでどうしても動かなくなって膠着状態に。こういうときは女の子だったら卵巣が引っかかっていることが多いのだがこの子は男の子。
押せど、引けど前に進まない。
いい加減イヤになって、小児外科に送ろうかとも思ったが、過去の経験則を思い出して考え直した。
ここで小児外科医にバトンタッチしたらどうなるか。
小児外科医はたかが鼡径ヘルニアで緊急手術なんてやりたくないから必死で圧迫して整復にかかる。その一念や強し。だいたい、整復してしまう。
つまり、こういう状態まで来た鼠径ヘルニアは必ず戻せるのである。
と言うことで、さらに粘っていたら、あるところで突然するりと戻った。
その瞬間、顔色はさっとピンクになって、ぐずっていたのがすやすや寝始めた。
気がつけば、電子カルテの診察待ちリストがのびてえらいことになっている。
それに、両手の握力が落ちて指がつりそうだった。
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