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かたおか小児科クリニック

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小児の慢性疼痛症候群

2013/05/19

都内で開かれた 小児科の勉強会で、子宮頸がんワクチンの「副作用」として問題になっている「慢性疼痛症候群」「複合型局所疼痛症候群」Complex regional pain syndrome(CRPS)の話を聞いてきた。

 お話しはJR総合病院の奥山先生。

奥山先生は感染症・免疫が専門だが、リウマチ関連の痛みという窓口からこのCRPSを見るようになったという。4例の診療経験があるそうで、そのうちの1例が子宮頸がんワクチン接種後のケース。

CRPSは外傷、骨折、手術、注射、帯状疱疹などの痛みを伴う出来事がきっかけとなって、全身の非対称的な移動性の、表在性の痛みが持続する。このために手足を動かせなかったり、軽く触っただけでもひどい痛みを感じる(アロディニアという)。登校できなくなる子どもも多い。

はっきりした頻度はわかっていないが思春期の女性に多い。(男女比 1:4)

診断も難しく、そもそもこの病気を専門に診断する診療部門がないことが問題。いくつもの医療機関を転々として検査を受けるが、「異常ありません」、「精神的なものではないか」などと苦しみを理解してもらえないことも多いという。

 

リウマチの教科書に載っている診断基準がを紹介された。

○きっかけとなる有害な事象の存在

○誘発する刺激に対して説明できない過敏な痛みが続く

○浮腫や発赤、発刊の異常がある。

○他にこの症状を説明できる疾患がない

 

CRPSは献血の採血後にも起きることがある。このため日本赤十字社では献血後の健康被害に対する補償の請求案内に「血管迷走神経反応による転倒」用と並列に「神経損傷・神経障害・CRPS」用の診断書を用意している。一般に採血によってCRPSが起きるのは40-50万回に1回とのこと。

 

子宮頸がんワクチンは2013年4月までに約820万本接種されている。一人3回接種するので270万人が受けていることになる。

現在子宮頸がんワクチン接種後のCRPSは3例報告されている。これは診断がついたものだけなので実際のケースはもっと多いと思われるが、それでも頻度ということから言えば希といえる。

子宮頸がんは毎年15000人が新たに罹り、3500人が命を落とす。

ワクチンを接種してCRPSを発症するリスクと、接種しないで将来子宮頸がんに罹るリスクとを比較して接種するかどうかを考える、というのが当面の対応ではないかと思う。

リスクのないワクチンはないのだから。

これからは子宮頸がんワクチン接種の際の説明では、すべての子宮がんを防げるものではないので検診を必ず受けること、迷走神経反射でおきる失神に対する説明に加えてCRPSのリスクについてもしっかり話をする必要があると思った。


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