2015/03/11
先週のNHK Eテレ「すくすく子育て」のテーマは「予防接種のQ&A」。
番組は新潟大学の齋藤昭彦先生と国際医療センターの堀成美さんが視聴者の質問に答えるという形。
その中で実際のワクチン接種風景の動画が欲しいと言うことで、接種に来られた保護者の承諾をえて当院で撮影を行った。
放映の日時は聞いていたのだが、すっかり忘れていた。3月7日土曜日だった。
再放送は3月13日(金)10時30分から11時とのことなので、録画予約でスタンバイしている。
http://www.nhk.or.jp/sukusuku/theme.html
こっちはすっかり忘れていたのだが(録画は1月だった)、あちこちから「見ましたよ」メールや電話をいただいて、あ、そうだったと思い出した次第。
その中に、かたおか先生の赤ちゃんへの接種方法が大腿部への筋肉注射であることで驚いた、小児への筋肉注射は認められていないので再放送ではテロップで注釈が必要ではないかというご指摘をいただいた。
番組の監修・回答者の齋藤先生はこれでよしと判断されて、筋肉内接種の動画を使われたはず。
乳幼児への不活化ワクチンの接種は有効性、安全性どちらの面からも大腿部への筋肉内接種が一番良い方法だというメッセージだと理解している。
ヒブワクチンにしても肺炎球菌ワクチンにしても同じ製品が海外では「筋肉内接種」が原則である。
わが国でも今度製造承認された10価肺炎球菌ワクチンは筋肉内接種が原則となっている。
今まではおおっぴらに「筋肉注射」と言わなかったのだが、これからは大腿部への筋注が普通になっていくだろう。
ワクチンの筋注問題の議論はだいぶ前から続いている。
日本では、1960年代に「風邪の治療」ということで、抗菌薬と解熱剤を混ぜて大腿部に筋肉注射するという治療がしばしば行われていた。
今でもたまに「風邪が一発で治る注射」を希望される年配者がおられるが、そういうイメージである。
そもそも風邪に治す注射など無い。それどころか、当時の抗菌薬も解熱剤も周囲の組織への刺激が強かったため、筋肉注射の結果筋肉が固まってしまう大腿四頭筋拘縮症の患者さんがたくさん出てしまった。
この時の問題はクロマイなどの抗菌薬やメチロンなどの解熱剤の性状に問題があったのであって、ワクチン接種が問題ではなかった。しかし、小児科学会の見解は小児への筋肉注射はするべきではないというものだった。
そういう経緯があって、わが国のワクチン接種のローカルルールは「皮下注射」ということになった。
しかし、小児への筋肉内接種が認められていないというのではなくて、ワクチンの添付文書に「皮下注射」しか書かれていないということである。
厚労省としても不活化ワクチンの接種は筋肉注射の方がよいということは分かっている。しかし、添付文書に書かれたことを変更するには、製造承認の治験をもう一度「筋肉内注射」でやり直さなければならない。
これは現実的ではない。
そこで、新しい承認申請で出てきた10価肺炎球菌ワクチンの治験に「筋肉注射」という接種方法を指定することによって、「筋肉注射」の一般化をはかろうとしたものと思われる。
この番組を契機として、「乳児期の不活化ワクチン接種は大腿部への筋肉注射」が当たり前になる事を願う。
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