2015/08/26
「感染症情報」にも書いていますがマイコプラズマによる肺炎、気管支炎が流行中です。
マイコプラズマ肺炎の特徴は、発症時は熱だけで、2−3日後から咳が出はじめ段々強くなってきます。
鼻水は出ないのが普通です。
咳が出る様になると聴診でも肺の雑音が聞こえます。
この時期には喉を綿棒で拭って調べる迅速診断が可能です。ただし、感度はインフルエンザの迅速診断などに比べると落ちる印象があります。検査に要する時間も長くて、15分〜30分かかります。
それでも外来で病原体診断が出来るのは有り難いことです。
マイコプラズマ感染症という診断がつけばたいていは抗菌薬で治療します。
小児の場合第一選択はマクロライド系(クラリス、ジスロマックなど)抗菌薬です。
最近のデータではマクロライド耐性マイコプラズマが増えていると言われます。
しかし、当院での経験ではマクロライドで治療開始して2日後の再診で解熱していないケースは希です。
2日後に解熱していない場合は小児にも使えるとされているニューキノロン系のトスフロキサシン(オゼックス)かテトラサイクリン系(ミノマイシン、ビブラマイシンなど)に切り替えるようにしていますが、出番は滅多にありません。
ミノマイシンなどテトラサイクリン系の抗菌薬は永久歯ができあがっていない8歳以下の小児に投与すると、歯芽のエナメル質の形成不全によって歯が黄色くなる黄染歯という副作用が知られています。(ビブラマイシンはミノマイシンに比べてこの副作用が少ないという報告があります。)
このため、8歳以下の小児へのミノマイシンの投与は原則として避けるべきです。
使うとすれば、マイコプラズマ感染症が強く疑われ、マクロライド系が無効なケースに、短期間に限って、十分な説明をして同意を得てからということになります。
皮膚科でとびひにミノマイシンが処方されることがあるようですが、他にも有効な抗菌薬があるのですからあえて使うべきではないと考えます。
幸いなことに当院ではマクロライドもオゼックスも効かずミノマイシンを使わざるを得なかった8歳以下のケースはありませんでしたが、最近たてつづけに幼児の長引く咳や熱にミノマイシンが処方されているお薬手帳を拝見する機会がありました。
マイコプラズマの検査もされていませんし、副作用の説明もされていませんでした。
ミノマイシンと黄染歯の問題は子どもを診る医師として常識であってほしいと思います。
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